においが分からない?

初稿 2025年8月18日

アレルギー性の鼻炎や副鼻腔炎などの、鼻腔炎症が長く続いていると、嗅覚にも変調が出てくる場合があります。
正確な嗅覚のチェックは、耳鼻咽喉科などで検査する必要がありますが、ここでは、鍼灸的に「におい」について考えてみましょう。

 

においが分かりづらい

 

東洋医学の臓腑理論の考え方では、

「におい」は、「肺」と「心」が大きく関与します。

「肺」、つまり現代医学で言うところの呼吸器に近い概念ですが、鼻は呼吸器の一部ですので、東洋医学的にも、現代医学的にも、区分は似ています。
また、「心」ですが、ここでは現代医学で言うところの「脳機能」に近いので、これも現代医学も東洋医学も解釈が似ています。

大きく異なるのは、「におい」の問題に、東洋医学では

「大腸」

を考えることです。
東洋医学では「大腸」は「肺」の表裏関係にあるので、関連が深いので、「肺」に関与するなら「大腸」も一緒に考えると言う理論ですが、現代医学にはこのような考えは無いので、ちょっと特殊かも知れませんね。

臓腑理論の観点では、今挙げた「肺」「心」「大腸」の臓腑に不具合が出ることで、においが分かりづらくなってしまうことが多いと考えています。つまり、臨床では、まず、取り上げた臓腑からチェックし、不具合が出ているところに対して治療してゆきます。

 

次に経絡理論の考えでは、「鼻」を走行する経絡は、

主たるものは「督脈」と「大腸経」と「胃経」です。

経絡は気血が巡るルートと考えられていますが、身体のさまざまな器官は、気血が巡ることで、その機能を発揮するとされています。

つまり、「鼻」を巡る経絡の流れに不調が起こると、「鼻」の機能が上手く発揮されなくなり、においが分かりづらくなったりすると考えます。

臨床では、これらの経絡のどこに流れが良くないものがあるかをチェックして、その流れが良くないところに対して治療してゆきます。

 

また別の視点、大極理論の考えでは、上半身では主に力が程よく抜けている方がよいと考えています。ちなみに、これを上虚や頭寒と言ったりします。

しかし、本来力が程よく抜けていた方が良いはずなのに、程よくではなく抜けすぎてしまったり、力が無駄に入ってしまうと、その部位で不調が起こってしまいます。もし、その場所が鼻で起きれば、場合によっては、嗅覚に影響が出るかも知れません。

このように考えて、本来力が入っているべき部位、別の言い方では下実や足熱と言ったりもしますが、これら力が入っているべき部位で力が入っていない部位を探して、力が入りやすくしてあげると、無駄に力が入っていたり、逆に入るべき力が入らなかったりしたのが、改善されたりします。

 

臨床的には、経験的に「においが感じづらい」と言う症状に効くとされるポイントから治療に使ってゆくことが普通ですが、上述のように考えて治療にもあたってゆきます。

2025年08月18日